CHROMA

世の中の "当たり前" を確認する

電気ブラン

神谷伝兵衛により、明治15年頃、東京浅草でつくられたもので、ブランデーをベースに白ワイン・ベルモットキュラソー・ジンの他、いくつかを加えてできた夢のカクテルなのです。

半兵衛 下北沢店のドリンクメニューより

どこかの居酒屋で名前に惹かれて頼んだのが、私とこのお酒の最初の出会いである。その後、森見登美彦の小説に「偽電気ブラン」として度々登場するのを目にするようになり、これがまた夢のようなお酒として語られるので、より好んで注文するようになったお酒である。

味は非常に雑多で、ブランデーの味に隠れて他に何が入っているか皆目見当もつかない。決して美味しいとはいえないが、癖になる味ではある。
また、このお酒は普通の飲食店や居酒屋、おしゃれなバーなどにはなかなか置かれていない。そのため、メニューにその名を見つけるとついつい注文したくなってしまうのだ。

電気ブランは不味い。誤ってこのお酒を人に勧めると、おそらく後で後悔することになる。
私の友人は、お酒を一口呑むなり顔を真っ赤にして怒った。このとき、友人は「はじめは不味くとも、その不味さが癖になる。はじめは我慢だ」という私の前置きの言葉を聴き逃してしまっていたのだ。友人は単に不味い酒を勧められたと思って怒ってしまったわけだが、いま私が何事もくどいくらいに前置きをするようになったはこのときからだ。

電気ブランは実は酒屋さんにも売っているし、ネットでも購入することが出来る。しかし、電気ブランを飲むためだけに、一度浅草の神谷バーに足を運んでみるのも良いかもしれない。